昨年春の県大会ではセンバツ優勝校の東海大相模と準々決勝で2対3という接戦を演じると、この春も順調に勝ち上がり、2004年以来18年ぶりとなる準決勝進出を果たしたのだ。2020年のドラフトでは笹川吉康がソフトバンクから2位指名を受けてプロ入りしているが、かつての細かい野球だけでなくしっかり振れる選手が増えてきている印象を受ける。まだ県内でもトップグループとは力の差はあるものの、横浜、東海大相模の2校が相次いで監督が交代するなど他校の動きも大きいだけに、間を縫うように勝ち上がることも十分に期待できそうだ。

 夏の甲子園を沸かせた学校として忘れてはならないのが松山商(愛媛)だ。春夏通算42回の出場を誇り、特に夏の選手権優勝5回は全国3位タイと“夏将軍”の異名をとる。1996年夏の決勝での“奇跡のバックホーム”と呼ばれる好返球で本工を破ったシーンを思い出すファンも多いだろう。そんなチームも近年は済美、松山聖陵などの新興勢力の台頭もあって県内で1回戦敗退ということも度々あったが、同じ県内の強豪である今治西で監督を務めた大野康哉監督が2020年に異動となったことをきっかけに上昇気流に乗り、この春は愛媛県大会で優勝している。

 四国大会では高松商(香川)に完敗したものの、“四国四商”と言われた古豪対決は話題となった。まだ甲子園で戦うには戦力的に十分とは言えないが、この春の結果とレベルの高い相手と対戦した経験は大きなプラスとなったことは間違いない。令和の時代に夏将軍が復活することを期待しているファンも多いはずだ。

 他にも上尾(埼玉)、興国(大阪)、上宮(大阪)、津久見(大分)、沖縄水産(沖縄)なども県内で上位に勝ち上がるケースが出てきており、復活を予感させるチームと言える。近年では高松商が2016年のセンバツで準優勝を果たすなど鮮やかな復活を遂げているだけに、他にもこれに続くチームが出てくることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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