東京都立松沢病院院長の水野雅文医師
東京都立松沢病院院長の水野雅文医師

うつ病、統合失調症、不安症といった精神疾患を持つ人の半数は10代半ばまでに発症しており、全体の約75%が20代半ばまでに発症しています。精神科医で東京都立松沢病院院長の水野雅文医師が執筆した書籍『心の病気にかかる子どもたち』(朝日新聞出版)から、「うつ病」について、チェックシートとともに一部抜粋してお届けします。

【「うつ病」チェックシートはこちら】

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【診断】

 気分の落ち込みや睡眠障害などは、うつ病ではなくても少し調子が悪い時によく経験する症状です。また、風邪などのように「いつから始まった」という具体的な発病の時期がはっきりせず、いつの間にか、「以前と違う状態になっている」ことが少なくありません。

 そのため、本人も病気だと思わず、受診が遅れがちになります。症状が長く続いている場合(目安は2週間)は、医療機関を受診してください。

 不登校や引きこもりでは、うつ病になっているケースも少なくありません。家族など周囲の人は「怠けている」などと決めつけず、本人の話をしっかり聞き、必要に応じて専門家につなげることが大切です。

 うつ病は、他の病気のように血液検査や画像検査などで異常を見つけることができないため、医師が詳しい聞き取りをして診断をつけることになります。

 うつ病ではないけれど、うつ病に似た症状を起こす病気との鑑別も必要です。精神疾患では、「不安症」や「パーソナリティ障害」「適応障害」「認知症」などがありますし、精神疾患以外でも、甲状腺や肝臓の病気などさまざまです。

 近年は、うつが流行のようになって、うつやうつ病という言葉があまり抵抗なく使われるようになりました。誰でもかかる身近な病気として捉えるなどいい面もあるのですが、健康な心の動きをうつ病だと決めつけたり、うつ病を「大した病気ではない」と軽視する風潮もあります。

 適切な治療につなげるには、正確な診断が欠かせません。うつ病かどうかの判断は自分で行わず、心配な場合は医療機関を受診してください。

『心の病気にかかる子どもたち』(朝日新聞出版)より
『心の病気にかかる子どもたち』(朝日新聞出版)より
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うつ病は根性を鍛えて治るものではない