「評議員会を株主総会と同視し、コーポレート・ガバナンスの考え方をそのまま私立大学の経営に導入しようとする点は、理論上合理性を欠くものと言わざるを得ません。(略)学生と日頃接していない学外評議員だけで、私立大学の教育研究に関する運営の責任は取れません。特に、提案の中核にある『学外者のみで構成される評議員会が、学校法人の重要事項の議決と理事及び監事の選解任を自由にできる』という制度では、学修者本位の教育環境は破壊され、評議員会が暴走しても止めることが出来なくなります」

 日本私立大学連盟会長、早稲田大総長の田中愛治さんは、学外者だけの評議員会を最高議決機関にするのはおかしい、と批判する。

「評議員は学生に接する機会がほとんどありません。例えば、多くの学生がオンライン授業を残してほしいと希望しているのに、苦しむ学生を紹介する報道だけを見て、中止を一方的に決められては、誰よりも学生が困ります。(略)大学の自治が保障されてきたからこそ、学問の観点から大事だと考えることに取り組むことができていたのです。そうした歴史を踏まえず、経営的な観点だけで方針を決めるのでは道を誤ります」(朝日新聞2022年1月15日)

 文科省が唱えたガバナンスによる大学運営健全化と、大学が守りたい自治や学問の自由のあいだには隔たりがあり、現在、学校法人ガバナンス改革会議で議論を進めている。

 文科省、大学ともに重きをおくべきは、学生目線を採り入れたガバナンスだ。専横な大学トップ、危なっかしい経営によって「学生が困ります」という状況を作ってはならない。

大学ランキング編集部)

※『大学ランキング2023』から抜粋