東大が一番、二番手がどこ、三番手がどこ、という考え方は、これからの時代に必要なのでしょうか。多様性の時代と言いながら、これ自体が反多様なんじゃないかな、と思います。

──国内の全研究者に占める女性の割合は17.5%、大学では28.3%と、研究分野でも男女の数に開きがあります。その背景に、女性研究者が出産や子育てによりキャリアを断念せざるを得なくなるという問題も指摘されています。

 私自身は学部卒ですが、かつて妹が政治・経済系の大学院で学んでいるとき、男尊女卑の環境を経験し、それに耐えられなくなって途中でやめました。国会議員も男女比は9対1で、政治の世界にも男性は多い。しかし有権者の半分が女性であるという点で女性の目にさらされ、政治家は女性に配慮しないわけにいきません。その点、アカデミアの世界は、閉鎖的で外から見えづらい部分があり、女性に対するアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)もあるのかもしれません。

 また、大学というのは仕事に至る手前の部分ですから、そこで格差や役割分業がつくられてしまうと、そうした人材が求められない。また、アカデミアの世界でも、女性にとって居心地が悪いのは日本にとってプラスではないはずです。「見える化」していくことを、これからの課題にしたいと思います。

■女子学生に伝えたいのは「自分たちの体を大切にしよう」

──大学は、学生が卒業後にどう生きるかを考えるキャリア教育にも力を入れています。女子学生に対し、どのようなキャリア教育が行われることが望ましいと考えますか。

 私は、女子大学である聖徳大の名誉学長を長く務めていて、学生に、キャリアについての特別講義を年に1回おこなっています。そこで彼女たちに言っているのは、「自分たちの体を大切にしよう」ということ。女性には、男性にはない子宮も卵巣も与えられている。母になるという選択肢を含め、女性として生きることが社会のオールドファッションな構造でつぶされるのはよくない、と思っています。

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自分を犠牲にして仕事してきた