ところが、直後、顔をしかめながらヒッティングに切り替えた的山が、鈴木平の次の直球を一振すると、まさかの満塁ホームラン。

「スクイズを失敗して、腹立つなと思いながら、ベースを回った。うれしいが、それ以上に腹が立った」と納得のいかない表情だったのも無理はない。

 この一発が効いて近鉄は10対5と大勝したが、作戦ミスの結果、ハプニング的に生まれたグランドスラムに、佐々木監督も「よっしゃあ!」と手放しで喜べなかったのも事実。8回途中から投入した抑えのバルデスが四球をきっかけに同点を許す誤算も怒りを倍加させたとみえ、「こんな程度の低いゲームでは、コメントできない」と試合後の会見を拒否した。

 ルール違反で投手交代が認められず、仕方なく続投した投手に白星がつく珍事が起きたのが、2000年4月11日のロッテvsオリックス(神戸)だ。

 3対3の6回、オリックスは1死からニール、アリアスが連続四球で、一、二塁のチャンス。次打者・日高剛のとき、ロッテの井上祐二投手コーチがマウンドへ向かい、内野陣とともに武藤潤一郎を激励した。

 だが、プレー再開後、武藤は初球を暴投してしまう。1死二、三塁とピンチが広がり、ベンチから山本功児監督が出てきて、左腕・藤田宗一への交代を告げた。これを受けて、飯塚富司球審も投手交代をコール。オリックス・仰木彬監督も左打者の日高に代えて、右の代打・藤立次郎を送り出した。

 ところが、公認野球規則8.06「監督、またはコーチは、その時の打者が攻撃を続けている限り、再びその投手のもとへ行けない」により、この投手交代は認められない。山本監督と飯塚球審の勘違いである。

 責任審判の林忠良二塁塁審が「日高に1球投げていますので、ルール上、武藤を続投といたします」と場内アナウンスで説明し、一度は降板したはずの武藤が引き続き日高に相対することに。うっかりミスの山本監督は「暴投で早く代えなあかんと思った。熱くなってたんだもん」と恥じ入るばかりだった。

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「勝ち星がついたのはうれしいけど…」