西武・西口文也
西武・西口文也

 最多勝のタイトルを狙うエースを勝ち試合のリリーフに送ったにもかかわらず、白星がほかの投手についてしまうハプニングが起きたのが、1997年9月6日の西武vsロッテ(千葉マリン)だ。

 5対2とリードした西武は4回2死満塁のピンチで、先発・新谷博に代えて、エース・西口文也をリリーフに送った。ハーラートップの13勝目を挙げさせようという東尾修監督の配慮だった。

 先発予定だった4日のダイエー戦が雨天中止となった西口は、この日まで中継ぎとして期間限定のベンチ入り。この機会にリリーフで“おいしい1勝”をと目論んだのである。

 西口は小坂誠を左飛に打ち取り、エースの貫禄でピンチを切り抜けると、5回も3者凡退に切って取った。これで勝利投手は決まりと思われた。

 ところが、そのまま5対2で逃げ切った試合後、勝利投手になったのは、西口ではなく、6回から3番手でリリーフした石井貴だった。これには東尾監督も「えっ、勝ちは西口につかないの?何で」と目を白黒させ、西口も「えっ、僕に勝ちがつかないんですか」と口をアングリ。

 実は、リードが保たれた状態で先発投手が5回未満で降板した場合は、単純明快に長いイニングを投げたリリーフ投手に勝ち星がつく。6回から7回2死まで無失点に抑えた石井貴のほうが、1/3イニング長く投げていたため、西口の勝利投手の権利が消滅してしまったのだ。もし西口が石井と同じイニングを投げていたら、無走者と内容の良い西口が勝ち投手になっていたはずだったのに、まさにとんだ勘違い……。

 チームは5連勝で2位・オリックスに4ゲーム差をつけたのに、思わぬケチがついてしまったが、最終的に西口は15勝を挙げ、初の最多勝を獲得。東尾監督もさぞかしホッとしたことだろう。

 スクイズを失敗した直後の打ち直しで満塁ホームランが飛び出すという大どんでん返しが起きたのが、99年5月26日のオリックスvs近鉄(大阪ドーム)だ。

 5対5で迎えた8回、近鉄は1死からローズが左前安打で出たあと、クラークが四球、礒部公一が死球で満塁とし、代打・鈴木貴久の押し出し四球で6対5と勝ち越し。なおも満塁のチャンスに、佐々木恭介監督は次打者・的山哲也にスクイズを命じたが、失敗してしまう。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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満塁弾を放ったのに「腹立つな」