ところが、このドタバタ劇がロッテに吉と出るのだから、野球は本当にわからない。武藤は日高を三邪飛に打ち取ると、代打・五十嵐章人に対しては四球で満塁としたものの、田口壮を遊ゴロに仕留め、ピンチを無失点で切り抜けた。

 さらに7回、小坂誠の左前タイムリーで4対3と勝ち越したことから、思いがけず勝ち投手まで転がり込んできた。瓢箪から駒のような珍事に、武藤は「こんな経験は今まで1度もない。勝ち星がついたのはうれしいけど……」と複雑な表情だった。

 一方、割を食う羽目になったのが、一打勝ち越しのチャンスで代打に起用された藤立。結局、この日は出番なしに終わり、“幻の代打”として記録にも残らなかった。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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