トヨタ自動車ロシア工場起工式で記念プレートの除幕を終え、拍手するプーチン大統領(右)と奥田碩トヨタ会長(当時)=2005年6月14日、サンクトペテルブルクで、吉川啓一郎撮影
トヨタ自動車ロシア工場起工式で記念プレートの除幕を終え、拍手するプーチン大統領(右)と奥田碩トヨタ会長(当時)=2005年6月14日、サンクトペテルブルクで、吉川啓一郎撮影

 プーチン氏は大統領就任後も、故郷サンクトペテルブルクへの外資誘致を進めた。トヨタ自動車の工場もその一つだ。プーチン氏は2005年6月の起工式、07年12月の生産開始式のいずれにも出席して、歓迎のあいさつをした。

 だが、国外に窓を開こうとした、かつてのプーチン氏の姿は消えてしまった。

 ロシアによるウクライナ侵攻後、トヨタを含む多くの外国企業は事業を休止したり撤退したりしている。

 プーチン氏はいらだちを隠していない。ロシアから撤退した企業を「臆病な裏切り」と非難。事業を続ける企業には「新たな成長の機会が与えられるだろう」と、信賞必罰で臨む姿勢をあらわにした。

 そこには、ロシアで仕事をし、ロシアと共に発展することを夢見た人たちが今受けているショック、失望、そして喪失感に対する共感や想像力は、みじんも感じられない。(朝日新聞論説委員・元モスクワ支局長 駒木明義)

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駒木明義

駒木明義

2005~08年、13~17年にモスクワ特派員。90年入社。和歌山支局、長野支局、政治部、国際報道部などで勤務。日本では主に外交政策などを取材してきました。 著書「安倍vs.プーチン 日ロ交渉はなぜ行き詰まったのか」(筑摩選書)。共著に「プーチンの実像」(朝日文庫)、「検証 日露首脳交渉」(岩波書店)

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