血管内治療でもコイル塞栓術は、治療が比較的シンプルであるため、安全性が高い。デバイスの進化とともに、「ステント」と呼ばれる筒状の金属性の網をネックの正常血管に置くステント併用コイル塞栓術も普及しつつある。この治療が選択されるのはどんな場合なのか。

「ネック幅が広めの場合、コイルが正常血管に逸脱する可能性があり、逸脱予防にステント併用コイル塞栓術が選択されることもあります」(森本医師)

■ステントの普及でさらなる適応拡大も

 ステントの登場で、最新治療として注目されているのがフローダイバーターだ。内頸動脈や椎骨動脈にある大きさ5ミリ以上でネックが広めの瘤の場合に、動脈瘤内にコイルは入れず、瘤のある正常血管に網目の細かい特殊構造のステントだけを留置する。これにより瘤内に流入する血液量が減少し、徐々に血栓化して破裂を防ぐ。壁の薄い動脈瘤に触れずに正常血管にステントを留置するだけで治療ができるため、術中破裂などのリスクが低い点がメリットという。

「ただし、フローダイバーターは高い技術と経験が必要なため、実施病院が限られています。高齢者で動脈硬化が進んでいると血栓化しにくい傾向も。ステントを使うと1年以上、抗血小板剤の服用も必要なため、消化管出血などのリスクがあると実施できません」(森本医師)

 大田医師もステントを使った治療についてこう話す。

「ステントを使うと血栓症などの合併症も増えやすい。基本的には『これしか治療法がない』という場合に限定しています」  未破裂脳動脈瘤治療の病院選びのポイントとはなんだろうか。 「あえて難しい治療に挑もうとせず、患者を第一に考えてくれるかどうか。よりシンプルで安全な治療を提案してくれる病院なら安心です」(大田医師)

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「手術数でわかるいい病院」https://dot.asahi.com/goodhospital/

【取材した医師】
横浜新都市脳神経外科病院 院長 森本将史 医師
脳神経センター大田記念病院 副院長、脳神経外科部長 大田慎三 医師

(文/石川美香子)

週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より