週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「脳血管疾患治療」の解説を紹介する。

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 脳動脈瘤とは、脳動脈の血管壁が膨らんでできた瘤(こぶ)だ。脳ドックのほか、めまいや頭痛、「物が二重に見える」などの症状や別の疾患でMRI検査をして見つかることも多い。

 脳動脈瘤は幅広い年齢層で見られるが、破裂するとくも膜下出血を引き起こし、約3分の1が死亡し、約3分の1が重い脳障害などの後遺症を残す。そのため、未破裂の状態で未然に治療するケースも増えている。

 ただし、脳動脈瘤が見つかった場合も半数以上が経過観察となる。実際に治療の対象になるのは2~3割だ。ここ1~2年のコロナ禍による手術の減少で、病院によっては、さらに治療割合が低下している可能性もある。

■リスクを考慮して治療法の選択を

 脳動脈瘤は治療しない場合の破裂リスクもあるが、とくに高齢者の場合は、治療することによるリスクも慎重に考慮する必要がある。

 未破裂脳動脈瘤のおもな治療法は二つだ。ひとつは頭蓋骨の一部を開いて、動脈瘤のネック部分を金属製のクリップで挟み、動脈瘤の破裂を防ぐ「開頭術(クリッピング術)」。開頭するため、からだへの負担は大きいが根治性は高く、再発が少ない。

 もうひとつは足の付け根の血管から細いカテーテルを入れて動脈瘤の中にコイルを詰めていく「血管内治療」だ。開頭術よりも短時間で治療ができ、入院期間も約1週間と、開頭術より数日短い。開頭術では届かない部位の脳動脈瘤も治療可能だ。低侵襲に治療ができ、デバイスの進化も近年めざましいため、治療の適応が拡がっている。

 さらに、ステントという筒状の金属性の網を動脈瘤の入り口に置くステント併用コイル塞栓術も普及しつつある。最新治療として、フローダイバーターという血管内治療も登場しているが、高度な技術が必要であり、治療可能な病院は限られている。

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動脈瘤の治療、どう見極める?