週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より
週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より

 その状況で感染患者を受け入れる病院を、医療の知識をもたない市民が見て、「あそこに行くと感染するのでは……」と怖がることを非難はできない。

 そもそも医療側にも同様の動きはあった。日本外科学会や日本内視鏡外科学会はコロナ初期の段階では、延期が可能な手術や検査は先延ばしにするように指示する通知を出している。このことからも、当時の医療界の混乱ぶりが見て取れる。

■「入院」をなるべく「外来」にすることで病床を確保

 事実、コロナ患者を受け入れた多くの病院で、手術の延期はおこなわれていた。コロナ禍の最初期の20年2月、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」で感染した乗客の受け入れからかかわった神奈川県立循環器呼吸器病センターでは、同年4月中旬から5月上旬まで、神奈川県の要請を受けて手術の制限を実施した。

 同センター所長の田尻道彦医師はこう語る。

「当院は循環器と呼吸器の専門病院です。結核用の隔離病棟があり、医師の半数が呼吸器内科医ということもあり、早々に新型コロナ重点医療機関に指定されました。緊急性の高い循環器系の疾患などから優先順位をつけて手術をおこない、良性疾患や早期の肺がんなどは、可能な範囲で待ってもらう時期があったのは事実です。患者さんから『待てない』と言われたときに備えて、受け入れてくれそうな病院をリストアップしてはいましたが、そこまではいかずにすみました」

 普段なら入院しておこなう気胸のドレーン処置や肺がんの化学療法などをなるべく外来でおこなうことで病床を確保した。

 そんな田尻医師に“風評被害”について聞くと、こんな答えが返ってきた。

「当院は元が結核病院で、いまも結核病棟があります。“結核=隔離”というイメージをもつ年配の方の中には、それだけで距離を置く人は一定数います。ところが今回のコロナ禍では、地域の方々がコロナ受け入れに好意的だったのです。マスクなどの不足時には寄付や差し入れが相次ぎ、本当に助かりました」

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