■コロナ病床を、30床から最大181床に拡大

 病院名に「がん・感染症センター」の冠を頂く都立駒込病院も、積極的にコロナ患者を受け入れた病院の一つ。

 病床数の枠は限られているので、感染の波が大きくなると一般病床を削ってコロナ病床に振り分けていく。当然、通常診療は圧迫、手術件数も減らさざるをえなくなる。

 都立駒込病院副院長の八杉利治医師は、こう語る。

「当院は第一種感染症指定医療機関であるため、コロナ病床を30床から最大で181床まで拡大しました。一方、都道府県がん診療連携拠点病院でもあるため、普段は全病床の7割をがん患者が占めています。なるべくそこに影響が出ないようにするため、結果として人工関節や婦人科領域などの良性疾患の受け入れをセーブすることになりました。それでも病床確保が難しいときは、初診を制限することで入院を調整することもあり、結果としてがんの手術数の減少を招いた形です」

■手術数が減った背景に、救急搬送の減少

 ところで、手術数が減った背景に、もう一つの要因が考えられる。救急搬送の数の減少だ。

 国内82の大学医学部と大学病院のトップで構成される「全国医学部長病院長会議」の調査によると、20年度の全国の大学病院での救急患者の受け入れ数は97万件で、対前年比28万件の減(-22.4%)だ。

 同会議会長で藤田医科大学病院群統括病院長の湯澤医師はこう話す。

「安易に救急要請をしなくなったことはあるでしょう。社会問題化している『タクシー代わりに救急車を呼ぶ行為』が減ったことは好意的に受け止められます。ただ、救急患者は病院に来てみないと受診が必要だったのかがわからない側面もある。『軽症の救急が減った』と喜んでばかりもいられないのです」

週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より
週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より

 今回、多くの病院がコロナの影響で手術数を減らしている中、一部の病院で「増加」を見せているところもある。

 コロナ患者を受け入れずに従来の治療に専念した病院、あるいは手術ができなくなった近隣の病院から患者を受け入れた病院などでは、増加に転じることはあったようである。

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