前述の湯澤医師はこう推測する。

「都市部のようにコロナ患者が多く発生した地域では、外来の受け入れ制限をする要因もあり、それは手術数の減少に直結します。一方で、比較的感染者の少なかった地方の基幹病院は、そうしたダメージも小さくすんでいる可能性はあります。増えた要因としてそうした地域特性はあると思います。また、普段から救急患者をあまり受け入れずに予定手術を中心に手術室の枠が埋まっている病院は、“救急件数の落ち込み”の影響を受けにくかったと考えられます」

■コロナ禍で予定通りに手術がおこなわれた理由

 この混乱期にあっても手術を予定通りおこなっていたのが前出の国際医療福祉大学成田病院だ。宮崎医師が語る。

「私の個人的な意見なのですが、悪性疾患と良性疾患の治療に医療側が濃淡をつけるべきではないと思うのです。良性疾患であっても患者さんが日常生活に不便を感じているなら、不要不急などと医療者が言うべきではないし、後回しにせず治療していくべき。なので当院ではがんも白内障も、基本的に予定どおりの手術をおこないました。もちろんこれは当院がオープンしたばかりで医療を提供する環境に余裕があったからできたことではあるのですが、たとえ余裕がなかったとしても、考え方は変わりません」

 コロナ流行下にあっても、基本的にコロナ患者を受け入れない姿勢を堅持した病院もある。大阪国際がんセンターだ。病院長の左近賢人医師に話を聞いた。

「当院は都道府県がん診療連携拠点病院で一般の急性期病院とは性格が異なります。コロナを受け入れなければならないということはなく、それよりもがん診療に専念することこそが社会貢献になると考えています」

■がん診療に専念することが社会貢献になると考えて

 一貫して「がん専門」を訴え、実践してきた同院だが、2021年春の第4波では、大阪府の要請を断りきれずに重症のコロナ患者4人を受け入れ、2週間にわたってICUを「コロナ対応」として使用した。

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