制作会社の台所事情が苦しい原因の一つは、コロナ禍で制作の遅延やアニメ放送の延期に見舞われたことだ。特にコロナ禍初年度となる20年の春から夏にかけては、「サザエさん」や「ポケットモンスター」をはじめ、緊急事態宣言発出によって数多くのアニメの制作がストップし、再放送や放送延期を余儀なくされた。京都アニメーションのアニメ映画「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」や、映画「名探偵コナン」や「シン・エヴァンゲリオン劇場版」など、劇場作品も多くが公開延期となった。

 一般にテレビアニメの場合、アニメ制作会社は放送時期が決定し、制作開始となったタイミングで、出版社や放送局、スポンサー企業などで構成される「製作委員会」から制作資金がもらえる仕組みになっている。中小をはじめとする制作会社の多くは、この資金から制作だけでなく人件費なども賄っており、企業の操業資金にもなっている。さらにテレビ放送枠を確保するのも一苦労で、アニメの放送枠が1年以上先まで埋まっていることも珍しくない。

 こうした状況下にありながら、特に20年4月から6月にかけては、コロナ禍で放送の空白期間が生じてしまった。これにより放送時期が玉突きでずれ込むこととなり、操業資金を見込んでいたアニメ制作会社にとってみれば青天のへきれきの事態となった。

 もうひとつの原因は、制作した作品がヒットしても、製作委員会に出資していないとアニメ制作会社は制作費以上の資金が得られないという構造的な問題だ。アニメを制作するには、一般的に1話あたり1500~3000万円のお金がかかると言われる。テレビ局の放送枠の基本単位である1クール(3カ月、12~13話)で軽く1億円以上の制作費が必要になる計算だ。

 この制作資金を制作会社だけで賄うことは困難であるため、テレビ局や出版社、広告代理店、映画会社や音楽CDメーカーなどがお金を出し合い、製作委員会という組織を作って制作費を捻出している。作品がヒットし、ブルーレイやグッズなどの売り上げが黒字になった場合は、この製作委員会に加わっている企業で利益が分配される仕組みだ。

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制作会社の「勝ち組」と「負け組」が明確に