鈴木も東京都内では名の知れた選手だったが、最初に評判になったのはそのピッチングであり、2年秋に招集された東京都選抜チームでも投手としてプレーしている。余談ではあるが、その時の選抜チームには現在ロッテで投手として活躍している佐々木千隼(都立日野→桜美林大)が野手として選ばれており、選手の将来性を見極めることの難しさを感じずにはいられない。鈴木は最終学年となってから野手としての評価は高くなっていたものの、3年夏もエースとして出場していた負担もあって、打撃面ではそれほど目立つ成績を残すことはなかった。ちなみにこの年の広島は1位で森雄大(東福岡→楽天)、増田達至(NTT西日本→西武)と2度抽選を外しており、それがなければもっと低い順位となっていた可能性は高いだろう。

 残りの3人もドラフト候補ではあったものの、上位指名を予想していた人は少なかったはずだ。山川と高橋は柳田と同じ地方リーグでプレーしていた選手だ。山川は長打力こそあったものの巨漢で基本的にファーストの選手というのが気になるポイントで、高橋も好不調の波が大きく安定感には欠ける印象だった。高校卒の宗も神奈川県内では評判の選手だったが、当時はまだまだ体が細く、運動能力だけでプレーしている印象が強かった。レギュラー定着までに7年かかったという点もそのあたりをよく物語っている。

 一方で同じように素材買いで上位指名を受けたものの、残念ながら結果が出ないままNPBを去った選手としては以下のような顔ぶれとなった。

吉本祥二(足立学園→2011年ソフトバンク2位)
川上竜平(光星学院→2011年ヤクルト1位)
森本龍弥(高岡第一→2012年日本ハム2位)
相内誠(千葉国際→2012年西武2位)
田中英祐(京都大→2014年ロッテ2位)
中塚駿太(白鴎大→2016年西武2位)
吉住晴斗(鶴岡東→2017年ソフトバンク1位)

 高校からプロ入りした5人のうち吉本、川上、吉住の3人は一度も一軍の試合に出場することができず、森本も7年間でわずか1安打、相内も21試合に登板して0勝7敗、防御率10.05という寂しい数字に終わっている。また大学卒の田中と中塚も一軍では未勝利のままNPBを去ることになった。7人とももちろん無名だったわけではなく、川上は甲子園でも活躍しているが、事前の評判よりも高い順位だった印象は否めない。中でも3人の抽選を外したすえに1位指名となった吉住は、本人も育成での指名を想定していたと話していたほどだった。

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やはり高い素材型のリスク