しかし、そんな大谷の低年俸生活ももうすぐ終わりそうだ。これは、地元紙『オレンジカウンティ・レジスター』で、チームの番記者を務めるジェフ・フレッチャー記者が、読者からの質問に答える企画記事(1月20日付)の中で述べられているものだ。

 同記者は、読者からの「エンゼルスにとって、大谷翔平と契約延長を行うベストタイミングはいつですか?大谷は史上最高額の平均年俸を得ると思いますか?」という質問に対し、次のように回答している。

「一般的に、FAまで2年というのが契約には良いタイミングです。つまり大谷にとっては、今から2022年の開幕までがベストな時期です」

 大谷は、2024年にFA権を得る予定だが、早ければ今シーズン中にエンゼルスと大型契約を結ぶかもしれない。しかし、フレッチャー記者は、その実現にはいくつかの問題があることも同時に指摘している。

 1つは、MLBと選手会との間の新労使協定が未だ合意されていないため、交渉そのものができないことだ。12月2日からのロックアウト前に大谷との交渉を始めることもできたが、そのような動きは一度も報じられていない。フレッチャー記者も、「投手陣の補強等、他の優先事項があったことから、それ(大谷との交渉)は無かっただろう」と推察。

 そして、次の問題は、これまで二刀流選手との大型契約を結んだ前例がないことだ。この問題について、フレッチャー記者は大谷の価値を算出するのは「タフだ」と答えている。

 また、同記者は、成績不振やケガで二刀流ができなくなるリスクもあることから、現在よりも高い大型契約とはなるが、「史上最高額を得ることはないと思います」と述べている。

 フレッチャー記者の予想とは別に、エンゼルスには、大谷との大型契約はそう簡単に決断できない事情もある。エンゼルスはマイク・トラウトとの12年総額4億2650万ドル(約484億円)や、アンソニー・レンドンとの7年総額2億4500万ドル(約278億円)の超大型の契約をすでに結んでおり、この2人だけでエンゼルスの総年俸(2022年)の45.67%を占めている。今後、ここに大谷が加われば間違いなくこの3選手で総年俸の半分以上を占めることになる。もちろん、エンゼルスもそれは考慮しており、将来(大谷との大型契約)に向けた余裕を設けている。しかし、野球専門メディア『コール・トゥ・ザ・ペン』からは、「大谷と大型契約を結ぶまで、エンゼルスはずっと金銭的な綱渡りをするだろう」と心配する声も出ている。

 最後に、もう一つ心配事となりそうなのは、MLBが今シーズンから両リーグとも指名打者制(ユニバーサルDH)を採用する方向になっていることだ。新労使協定の合意次第ではあるが、このユニバーサルDHが採用されれば、これまで指名打者制がなかったナ・リーグの球団でも、大谷が二刀流を続けられるようになる。つまり、大谷は、今後はエンゼルスを含めたア・リーグのチームにこだわる必要がなくなる。

 エンゼルスが早く大谷と大型契約を結ばなければ、今後大谷を引き留めることは一層難しくなってしまうだろう。はたして、エンゼルスは大谷にどんなオファーをするのか。また、それは海外メディアを含め、皆が納得できるような内容となるのだろうか。今後も、大谷とエンゼルスの関係には引き続き注目していきたい。(在米ジャーナリスト・澤良憲/YOSHINORI SAWA)