※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 寒い季節は皮膚が乾燥し、かゆくなることはありませんか? これが年をとると、乾燥していなくてもかゆみが出てくる病気があるといいます。近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師が、かゆみのメカニズムについて解説します。

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 寒くなると皮膚が乾燥しかゆみが出現します。かゆみをそのまま放置しておくと湿疹となり、茶色い痕が残ることもあります。私は40代半ばですが、若い頃に比べ肌は乾燥しやすくなっており、ちょっとしたことでかゆくなります。

 ご年配の方では、見た目に乾燥がないきれいな皮膚でもかゆみが出現することがあります。いわゆる老人性皮膚掻痒(そうよう)症という病気です。老人性皮膚掻痒症は50歳から増えはじめ男性に多い皮膚疾患です。治療には抗アレルギー剤やオイラックスなどのかゆみ止めを使うことが一般的ですが、効果が乏しいことが多く治療に困ります。

 なぜ年をとると皮膚がかゆくなるのか、このメカニズムはずっとわかっていませんでした。2021年のノーベル医学生理学賞は、このかゆみ過敏の仕組みを解き明かす大事な発見をしたパタプティアン博士が受賞しています。今日はかゆみ過敏のメカニズムについて解説したいと思います。

 私たちが普段感じるかゆみには、化学的なかゆみと物理的なかゆみの2種類が存在すると言われています。一般的に、湿疹など皮膚病のかゆみは化学的なかゆみに分類されます。一方、高齢者やアトピー性皮膚炎を患っている人は綿棒でこすっただけでもかゆみが起きます。このこすっただけでかゆいのが物理的なかゆみと呼ばれるもので、化学的なかゆみと物理的なかゆみは脊髄(せきずい)での伝達経路が異なることがわかっています。

 健康な皮膚を触ってもかゆみが起きることはまずありません。これは触覚が物理的なかゆみを普段から抑制しているためです。パタプティアン博士は触覚に重要なPIEZOという分子を発見しました。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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