2013年、高さ5千メートルに達した桜島の噴煙。鹿児島地方気象台提供
2013年、高さ5千メートルに達した桜島の噴煙。鹿児島地方気象台提供

 日本で標高が最も高い富士山は、大規模噴火の可能性が常に心配される活火山の一つだ。ただ日本は火山大国。専門家の間ではそれ以外の活火山にも目が向けられている。過去の噴火の規模で比較すれば、1707年の富士山大噴火を超える活火山が全国に16もあることが、AERAdot.の調べでわかった。さらに取材を進めると、Xデーに今から備えるべき火山もわかってきた。

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「内閣府では首都圏への降灰対策の議論を進めているが、これは富士山の大規模噴火だけを想定したものではありません」

 産業技術総合研究所(産総研)地質調査総合センター活断層・火山研究部門の山元孝広副研究部門長は強調する。

 2020年に内閣府の中央防災会議は、1707年に富士山が大規模噴火したケース(宝永大噴火)を事例にした首都圏における火山灰の降灰シミュレーションを公表した。1707年の大規模噴火では、降灰が横浜で10センチ、江戸でも5センチもの厚さになったところがあると推定。火山灰が1センチでも積もれば、車の運転は難しくなり、火力発電所のガスタービンに火山灰が入ると、発電設備が損傷する可能性が高いとされる。電気・ガス・水道などのライフラインが止まるだけではなく、気管支炎などの住民の健康被害も想定されている。

 この公表で富士山の大規模噴火に特に注目が集まったが、想定していた火山はほかにもある。山元氏はこう指摘する。

「富士山以外の活火山でも大規模噴火する可能性があることは専門家の間では共通の認識です。たとえば首都圏へ影響でいえば、浅間山。大規模噴火すれば、首都機能が壊滅的な被害を受ける可能性もあります。首都圏の住民は大規模噴火の被害を受けた経験はないでしょうが、噴火の長い歴史から見れば、偶然でしかない。内閣府や自治体でも万が一の噴火に備えてどう対応するか。議論を進めているところもありますが、十分に進んでいるとは言えない状況です」

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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