比較的ゆっくりと進行する病気だが、しびれを感じている場合は早めに受診したほうがいいだろう。しびれは神経が圧迫されて起こるもので、一度傷んだ神経は元に戻らないため、治療で改善しにくいからだ。

 もう一つ、腰痛・足のしびれや痛みを起こす代表的な病気が、主に手足の動脈硬化により血流が悪くなる末梢動脈疾患(PAD)だ。末梢動脈とは、心臓と頭蓋内動脈以外のすべての動脈を指す。動脈硬化以外に、血管炎や膠原病などが原因となることもある。以前は閉塞性動脈硬化症や下肢慢性動脈閉塞症と呼ばれていたが、現在は原因に関係なく末梢動脈疾患と呼ばれている。

 主な症状は、手足の冷え、お尻や太もも、ふくらはぎの痛み、しびれ、間欠性跛行などだ。軽度の場合は無症状のケースもあるという。重症の場合は皮膚萎縮や脱毛などを引き起こす。足の動脈を診たり、足の血圧を測定したりすることで判明する。

 北海道医療センター統括診療部長・脊椎脊髄病センター長の伊東学医師はこう話す。

「高血圧や成人病の人に多いです。全体的に血流が悪く、筋力も下がっていて冷えるのです。腰部脊柱管狭窄症を併発している場合もあります」

 からだ全体の動脈硬化が進行し、合併症が原因で命の危険が生じることもあるため、全身の血管を調べることも重要だ。放置して下半身の一部が壊死すると、切断しなければいけなくなるケースもある。

 腰痛・足のしびれや痛みの診察について、田中医師はこう話す。

「腰の骨のX線画像診断と神経症状を確認する筋力検査、問診をします。例えば、どこにどのような症状があるのか、症状が出るのはどのようなときか、日常生活でどれくらい腰を曲げるかなどを確認し、必要があればMRIや筋電図などの追加検査もおこないます。血行障害が疑われるようであれば、血流を測る検査も実施します」

■安静時の痛みはがんの可能性も

 診察で医師が注意しているのは、内科的な疾患によって症状が出ている可能性だという。

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