「腰痛・足のしびれや痛みのある人に診察を勧める理由は、恐ろしい病気が隠されていることがあるからです。悪性腫瘍、病的な骨折、重度の神経症状などで、手術のタイミングを逃すと重篤な後遺症が残るものがあります。特に、安静時の脚の痛みを感じたら急いで病院に行きましょう」(田中医師)

 伊東医師は「特に次の三つの病気は見逃してはいけません。早期治療がポイントです」と話す。

「一つ目が、がんです。安静時の痛みは要注意で、がんの転移であるケースがあります。特定のがんではなく、どのがんも可能性があります。二つ目は、高齢者に多い化膿性脊椎炎。尿路感染や誤嚥性肺炎などにより菌が背骨に感染し発熱や腰痛が起きます。三つ目は50代以降の女性に多い骨粗しょう症。背骨の一つひとつがつぶれやすく、痛みが出たり、背骨が曲がって姿勢が変わったりします」(伊東医師)

 ほかに尿管結石や尿路結石といった泌尿器系の病気や、大動脈瘤などの血管の病気などもある。

 一方、積極的な治療が必要ではなく、ある程度は放っておいてもいい状態もあるという。

「入浴などでからだを温めたら症状がよくなるものは、あまり心配は要りません。それはほとんどの場合、加齢により椎間板に亀裂が入った軽症の腰椎椎間板ヘルニアで、保存的治療で経過を見ていきます。腰痛は見守りが必要な症状でもあるのです」(同)

 このように腰痛・足のしびれや痛みを引き起こす病気はさまざまなので、自己判断は禁物だ。正しい診断こそが適切な治療、症状の改善へとつながっていく。

 腰部脊柱管狭窄症を含む首腰の手術数については、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』で、全国の病院に対して独自に調査をおこない、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。ランキングの一部は特設サイト「手術数でわかるいい病院」で無料公開しているので参考にしてほしい。https://dot.asahi.com/goodhospital/

(文・小久保よしの)

週刊朝日  2022年1月7-14日号