「実は下肢静脈瘤があると、エコノミークラス症候群(正式には肺血栓塞栓症)になるのではないか、と思い込んでいる人が多いのです。しかし、これは大きな誤解です」(孟医師)

 エコノミークラス症候群は足の深いところを流れている深部静脈に血栓ができ、これが心臓や肺に飛ぶことで発生するものだ。表在静脈に起こる下肢静脈瘤とは直接、関係がないことがわかっている。

「動脈の病気ではないので、脳梗塞や心筋梗塞の直接の原因になることもありません。新型コロナウイルスで起こりやすいといわれる血栓も、下肢静脈瘤については明らかな関係は指摘されていません」(同)

 ところが一部の医療機関では正しい情報が提供されず、「ほうっておくと血栓ができる」などと患者の不安をあおって、治療をすすめるケースがあるという。この点については、日本静脈学会が学会ホームページで注意喚起をおこなっている。

「このようなことにならないためにも、下肢静脈瘤を診断できる適切な医療機関を受診することが大切」と両医師は言う。

 下肢静脈瘤の専門は主に血管外科だ。日本では心臓血管外科でも診ることが多い。最近は下肢静脈瘤を専門に扱うクリニックも増えているが、玉石混交であり、かかりつけ医から医療機関を紹介してもらうのが理想的という。

(狩生聖子)

週刊朝日  2021年11月26日号