訴状、蹶起趣意書、宣言、遺書、碑文、天皇のおことば……。昭和・平成の時代には、命を賭けて、自らの主張を世の中へ問うた人々がいた。彼らの遺した言葉を「檄文」という。
保阪正康氏の新刊『「檄文」の日本近現代史』(朝日新書)では、28の檄文を紹介し、それを書いた者の真の意図と歴史的評価、そこに生まれたズレを鮮やかに浮かび上がらせている。今回は、よど号ハイジャック事件のリーダーである田宮高麿が書いた「出発宣言」をお届けする。
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<出発宣言>
(1)
全ての日本プロレタリア、人民諸君、同志諸君!
そして全ての革命的世界プロレタリア、人民諸君!
我々は、今、日本を出発せんとしている。ハイ・ジャックで……
60年代後半、確実に、万国プロレタリア、人民の決死の闘いが、世界革命の時代、世界革命戦争の時代を告げてきた。
この時代、万国プロレタリア、人民の力によって、国籍、国境はとってはらわれるべきである。国境、民族を乗り越え、万国プロレタリア、人民が団結してこそ、帝国主義、ブルジョアジーを、この地球上から1掃しうる。だが国境、民族を越えた、万国プロレタリアの団結は、帝国主義、ブルジョアジーとの血の闘いを経ることなしにはありえない。
そして又、全てのプロレタリア、人民は知っている。過去、幾度か、「国際主義」「万国のプロレタリア団結せよ」の旗の前に決起せんとしたことか。そして、その度に、如何に多くの「共産主義者」達が、その名の下に、プロレタリア、人民を裏切ってきたかを……
今、世界革命、世界革命戦争の時代である。この時代を領導しようとする我々は、まず、我々自らを、この時代にふさわしい主体に転化し昂め上げなければならない。我々はかたく信じる。我々が、言葉だけでなく、現実的に、徹底した「国際主義者」になりきった時にのみ、プロレタリア、人民の心を固く握るだろうと。
ハイ・ジャックは、その出発点である。我々は、意識的に自ら国籍を捨て、国境を強行的に、突破することから、それを開始せんとしているのである。
(2)~(7)までは略
(8)