手足の指の先にある爪。この爪にも病気が発生することがあります。爪に黒色の線がある場合、悪性黒色腫というがんの可能性があります。爪の症状から考えられる病気について、近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師が解説します。

【全身イラスト】てのひらや爪にも!皮膚がんのメラノーマ、身体のどこにできる?

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 爪の垢(あか)を煎じて飲む、という言葉があります。

 優秀な人をあやかって、爪の垢のような汚いものでもいいので薬として飲めば少しでも近づけるかもしれない、という意味です。

 爪の成分はケラチンというタンパク質です。これは皮膚の成分と基本的には同じです。爪の根元にある爪母(そうぼ)と呼ばれる部分から爪はできます。皮膚のケラチンと違って硬ケラチンなので、ポロポロと落ちる垢のようにはならず硬い板状の形成をします。

 さすがに爪の垢に効能がないのはみなさんおわかりかと思いますが、爪が変形したりフケのようなものが多くたまった場合、いくつかの病気が考えられます。

 まず一番多いのは爪白癬(つめはくせん)です。水虫の原因となる白癬菌が爪に感染すると、爪が白く濁ったり垢のようなモロモロとしたものが付着します。足の指の間の水虫を長年放置しておくと爪白癬になると言われているので、まずは足水虫を治しましょう。爪白癬は塗り薬ではなかなか治らない病気ですので、皮膚科で飲み薬の治療をすることをお勧めします。

 ちなみに爪の一部が緑色に変色した場合、緑膿(りょくのう)菌というばい菌の感染を疑います。最近はジェルネイルと爪の間に緑膿菌の感染が起きるケースもあり、ジェルネイルをしている人は注意が必要です。

 乾癬(かんせん)という病気でも爪に変形が起きる場合があります。乾癬は表皮細胞のライフサイクルが亢進(こうしん)してしまい起きる病気です。普通、表皮角化細胞は1カ月から1カ月半で入れ替わりますが、乾癬の場合は入れ替わる期間が1週間程度とかなり短くなります。結果として、未熟な皮膚が次々とできてしまい、ポロポロと剥がれ落ちてしまいます。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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