「これは、子どもが不登校になった家庭によくあるパターンです」

 と全国フリースクール伊藤幸弘塾の塾長、佐野英誠さんは指摘する。

「いわゆる『いい子』だった子が不登校になると、親は驚いておろおろしてしまう。毅然とした態度がとれず、腫れ物に触るような感じになってしまうことが多いのです。さらに話し合いのなかで、子どもに『厳しく育てられたのが嫌だった』『受験したくなかったのに無理やりさせられた』などと言われると、親は『悪かった』と謝ってしまう。すると子どもは、『やっぱり親が悪いんだ』『こんな状況になったのは親のせいだ』となり、親に責任転嫁してきます。その結果、親子の力関係が逆転してしまうのです」

 では、親はどうすればいいのだろうか。子どもの言い分をきいて、親が自らの非を認めるのは悪いことではないように思える。

「たとえ子どもに責められても、親は簡単に謝ってはいけません。子どもの気持ちを受け止めることは必要ですが、うろたえず、毅然とした態度をとることが大切なのです」

 と佐野さんは言う。佐野さんによると、子どもを叱れない親が増えているという。

「子どもに気を遣いすぎる親が多いと感じます。親子面談の様子を見ていると、わが子なのに腫れ物に触るように接している人もいる。子どもが成長する過程では、わがままや暴走を止めるために、ときには心を鬼にして、厳しく接しなくてはいけないときもある。それができない親は、ゲームの魅力にとりつかれた子どもに、最終的に暴力で押し切られてしまう事態にもなりかねません」

■ 体罰以外の方法でどう「しつけ」をしたら…

 子どもを叱れない親が増えている背景には、「しつけ」の常識が変わってきたこともある。

 2018年ごろから、子どもの命が奪われ虐待事件が続けて起きたことで、「しつけ」と称した暴力を許してはいけないと世論が高まった。2019年6月には児童虐待防止法と児童福祉法の改正法が成立。「児童のしつけに際して、体罰を加えてはいけない」ことが明記された。

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個を尊重する時代にどうやって教えるか