写真はイメージです(Getty Images)
写真はイメージです(Getty Images)

 コロナ禍の影響もあり、子どもの「ゲーム依存」が深刻な社会問題となってきている。親は子どもにゲームをやめさせることができず、それどころか子どもが小、中学生であっても、親が言いなりになってしまっているケースが少なくないという。なぜ、そうした事態に陥ってしまうのか。ゲーム依存の子どもとその親を支援する専門家に取材した。

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 夕方7時。ようやく忙しい一日を終え、それぞれの人が家路を急ぐ時刻だ。しかし40代の会社員、ヒロシさん(仮名)の足取りは重い。向かうのは自宅ではなく、スーパー銭湯だ。汗を流したあとは、コンビニで弁当を買って近くの公園へ。ここでひとりぼっちの夕食をとるのが日課なのだ。
ヒロシさんは、妻と3人の子どもとの5人暮らし。しかし、会社を出てまっすぐ家に帰ることはない。理由は、「息子に拒否されているから」。

 数カ月前から、一番下の中学2年生の息子のタカアキ君(仮名)が自分を煙たがるようになり、避けるようになった。自分が家にいると息子は部屋から出てこない。だんだんと家に居づらくなり、なるべく遅くまで外で時間をつぶしてから帰るようになった。休日も、スーパー銭湯でほぼ一日を過ごすことが多い。

 夜の公園にいるとき、近所の家から楽しそうな声が聞こえてくると、胸が締めつけられるような気がする。

「どうしてこんなことになってしまったのか。自分の子育ての何が悪かったのか」

 何度も何度も考えたが、答えは出ない。

■  不登校でふさぎ込む息子 無気力になり当たり散らす

 ヒロシさんの家は、近所でも知られる柔道一家だった。息子が幼いころから柔道を教えてきた。とくに父親のヒロシさんは、「強い子に育てたい」という気持ちで、厳しくしつけをしたという。タカアキ君は活発で、中学に入るころまでは、柔道にも勉強にも積極的に向き合っていた。

 中学1年の夏休みが終わったころに異変は起きた。タカアキ君は親の勧めで中学受験をし、私立中学に入学していた。ところが、友達とのトラブルがきっかけで、学校に行きたくないと言い出したのだ。

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一斉休校を機にのめり込んでいった