吉田が苦しむ中で、投手の先頭を走っているのがドラフト6位入団だった戸郷翔征(聖心ウルスラ→巨人)だ。2年目の昨年はローテーションに定着して9勝をマークし、今年は実質“2年目のジンクス”に少し苦しんだ時期はあったが、ここまでチーム2位となる8勝と初の二桁勝利も視野に入っている。150キロを超えるストレートの勢いと、絶対的な決め球であるフォークを持っているというのは大きな武器である。もうひとつ頼れる変化球がマスターできれば、ストレートが更に生きてくるだろう。

 戸郷以外に完全な主力となっている投手はいないが、ここへ来て成長を見せているのが渡辺勇太朗(浦和学院→西武)だ。当初はリリーフでの起用だったが、後半戦は2試合に先発して2連勝。140キロ台後半のストレートと鋭く変化するカットボールは一級品だ。スタミナ面が強化されれば、来年は開幕からローテーション投手として期待できそうだ。

 彼らはまだまだ若手ではあるが、来年は4年目となり大学に進学していたら最終学年となる年である。高校から社会人に進んだ同期の中には今年のドラフトでプロ入りする選手も出てくるはずだ。そういった存在にも刺激を受けて、残り試合、そして来年以降も更にハイレベルな出世争いを見せてくれることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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