こうした都の判断は、コロナ禍と現場で向き合わざるを得ない自治体ならではと見ることもできるが、感染力の強いデルタ株が全国的な広がりを見せているいま、国としてもきちんとした姿勢を見せてもらいたいところだ。

 国と都は8月23日、都内すべての医療機関に、感染症法にもとづいて、コロナ病床の確保などを要請した。正当な理由なく応じない場合は勧告をして、従わなければ医療機関名の公表もできる。しかし、厚労相は、独立行政法人の国立病院機構とJCHOに対し、「公衆衛生上重大な危害」が生じていると判断した時には、それぞれの設置法に基づいて必要な措置などを求めることができる。その場合、両機構は正当な理由なく断ることはできない。

 都と足並みをそろえてと言うなら、国は、民間病院に求める前に、両機構に模範となる対応を求めるべきだ。いまのままでは、都に比べて説得力が乏しく、民間病院からさらなるコロナ病床を引き出す迫力に欠ける。そもそも、コロナ病床の不足は東京だけの問題ではない。負け組病院に起死回生のチャンスを与えることがコロナ病床確保につながれば一石二鳥ではないか。
(朝日新聞経済部 松浦新)