会見する田村憲久厚労相(撮影・松浦新)
会見する田村憲久厚労相(撮影・松浦新)
地域医療機能推進機構(JCHO)(撮影・松浦新)
地域医療機能推進機構(JCHO)(撮影・松浦新)

新型コロナウイルスに感染し、入院できずに自宅などで生命の危険を感じている患者が多い東京で、厚生労働省が所管する病院のひとつがコロナの専用病院に名乗りをあげた。遅くはあるが、一歩前進だ。

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 しかし、田村憲久厚労相はその前日の記者会見でも「(コロナ以外の)患者が入っておられて、その方々、追い出すわけにはいきませんよね」などと、国所管病院に病床確保を求める難しさを語った。「災害医療」とも言われる状況で、真価を発揮すべき国所管の病院の動きは、なぜこんなに遅いのか。

 今回、コロナ専用で名乗りをあげたのは地域医療機能推進機構(JCHO)の東京都江東区にある東京城東病院という病院だ。JCHOと言われてピンとこなくても、政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長が理事長を務めていると聞けば、政府系の大病院グループであることは察しがつくだろう。

 同機構は8月28日、ホームページで、「新たに国の要請を受け、東京城東病院を専用病院にすることにしました。9月末を目途に、最大50床程度の病床を提供する予定です」と公表した。

 JCHOは、この時点で、全国57病院の約1万4千床の6.1%にあたる870床がコロナ病床だった。この対応で920床程度になるというので、同病院はこれまでゼロだったことになる。同病院の病床数は117。田村厚労相が27日の閣議後記者会見で指摘した、もともとの入院患者はどうなるのか。

 医療関係者は「都内にも、ベッドに空きがある病院はあるんです。厚労省が救急病床で『選択と集中』を進めているためです。患者の在院日数が短いほど診療報酬が高くなる仕組みを強化してきた結果、コロナ前から救急車が集まる病院と集まらない病院の優勝劣敗が進んでいました。引き受け手はいくらでもあります」と指摘する。

 実はJCHOの東京城東病院も、そんな「負け組病院」のひとつだ。厚労省は2019年9月、2025年に必要な入院ベッド数を今より5万床ほど少ない119万床と推計し、全国1455の公立・公的病院のうち424病院について、病院としての役割や病床数を見直す検証が必要と、具体的なチェック項目を含めたリストを公表した。

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浮いた5万床をコロナ病床に