谷亮子(当時・田村亮子)は96年のアトランタ五輪決勝で、初出場した16歳の伏兵・ケー・スンヒ(北朝鮮)に敗れて銀メダルに。92年のバルセロナ五輪決勝で敗れてから続いてきた連勝記録は84で止まった。誰もが金メダルを信じて疑わなかっただけに、攻めあぐねた末に茫然自失の表情を浮かべる谷の姿は衝撃的だった。

 他国を見ると、男子100キロ超級で3大会連続金メダルを狙う絶対王者のテディ・リネール、女子63キロ級で圧倒的な強さを誇るクラリス・アグベニェヌを筆頭に金メダル候補をそろえたフランスが日本の最大のライバルとなるだろう。また、「打倒・大野将平」に闘志を燃やす男子73キロ級の安昌林ら強敵が並ぶ韓国も侮れない。

 五輪を4大会以上取材しているスポーツ紙記者はこう期待を込める。

「バルセロナの小川さんも、アトランタの谷さんも銀メダル獲得は立派な成績です。ただ柔道はお家芸で金メダル以外は落胆するムードが国民の中である。こんな競技は柔道だけでしょう。選手たちは大きな重圧を感じるかもしれませんが、国内のライバルとの争いを制して日本代表の座をつかむのは、金メダルを獲得するのと同じぐらいハイレベルです。自信を持って五輪に臨んでほしいですね」

 今大会はコロナ禍での開催で無観客試合での開催となる。各競技のアスリートたちは「お客さんの声援が大きな力を与えてくれる」と口をそろえる。観客の大声援は試合に大きな影響を及ぼす。

「ホームアドバンテージ」がない中で、強靭なメンタルを貫けるかもカギを握る。選手たちが笑顔で表彰台の真ん中にのぼる姿を期待したい。
(牧忠則)