山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
写真はイメージ(GettyImages)
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 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「東京五輪と熱中症」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

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  梅雨入りし、暑さに加えて湿度が高いせいなのか、マスクを着用しながら歩くと息苦しく感じる今日この頃。東北大学の杉本周作氏らの報告によると、太平洋岸を進む黒潮が大蛇行することにより、今年の夏は蒸し暑い不快な日が6割程度も増えるようです。気象庁も、8月の関東甲信地方の気温は「平年並か高い」と言います。太平洋高気圧とチベット高気圧の2重の高気圧に覆われることで、35度以上の猛暑日が続くことも予想されています。マスクの着用がとてもつらい夏になりそうですね。

 コロナワクチン接種が済んだ高齢の方に、「まだマスクは必要ですか?」と聞かれることが増えてきました。「日本も外国のように接種が進んで、接種した人はマスク不必要となるまではつけておいてくださいね」という一方で、「暑くなってきたら、適宜外して熱中症には気をつけてくださいね」とお伝えしています。

 さて、東京オリンピック・パラリンピック開催予定日まであと3週間となりました。現在の最重要懸念事項としては、新型コロナウイルス感染症であることに間違いはありません。しなしながら、最も気温が高く湿度も高い期間中に開催予定であることから、「熱中症」対策も重要な対策の1つです。マラソンの開催地が東京から札幌に変更になったことを覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

 熱中症とは、体温が外へ逃げる仕組みが破綻し体温調整ができなくなることによって、身体に熱が溜まってしまう状態です。熱中症の要因の1つ目は、引き起こしやすい環境です。高温多湿、風が弱い、日差しや照り返しが強い、閉め切った室内やエアコンが設置されていない部屋などが一例です。要因の2つ目は、身体状況です。体温調整機能が低下している高齢者や、発汗機能が未発達な乳幼児、疾患を抱える方や肥満、栄養状態が良くない方や、脱水状態の方、寝不足や二日酔いなど体調不良の方が挙げられます。3つ目は、引き起こしやすい状況です。激しい運動や長時間の屋外作業、不十分な水分補給である状況です。

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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