稲田さんは前の勤務していた店を辞めて、半年ほど準備期間を経て、独立したという。コロナ禍で緊急事態宣言の中、アルコールは出さず、時短営業を続けていたという。

 SNSにはこう書き込んでいた。

<明日17時より営業再開いたします。ノンアルコール・カラオケ中止でどうなるのかとても心配でありますが、お客様に楽しんでいただけるように色々考えてみました☆1時間 1500円(1ドリンク込み)です>

<土曜日、日曜日は15時からOPENいたします。明日の手作りフードは「ボロネーゼスパゲッティ」「マシュマロトースト」をご用意しております。宜しくお願いいたします!>

 喫茶営業やフードメニューもそろえて、意欲的な様子がわかる。先の知人はこう続ける。

「稲田さんは兵庫県の出身と聞いていた。20歳くらいからJR天満駅近くのカラオケバーで仕事をしていた。おしゃべりも面白くて、気さくでいい子でした。昨年夏に前の店を辞めて、独立しようとJR天満駅近くの物件を一生懸命に数か月の間、歩き回って探し、今の店を見つけた。25歳で独立ですから、すごい頑張っていましたよ。店の内装の一部は自分でホームセンターに行き、木などの材料を買い、自分で手作りした。今年1月にお店がオープンした時、コロナで大変だったが、たくさんのお客さんがお祝いに来ていた。その後もノンアルコールでしか営業できない中、繁盛していましたよ。ゴマちゃんという店名は、癒し系の稲田さんの顔がゴマアザラシのかわいい表情と似ているからつけた。彼女は気に入っていました」

 店のSNSの写真を見ても、手作り料理で昼の営業をし、お客さんで賑わっている様子がよくわかる。

「店内は物色された様子がなく、窃盗目的ではないようだ。稲田さんの服装にも乱れはなかった。また同じビルの店の人も悲鳴などを聞いたという話もない。顔見知りの犯行ではないのか?犯人は施錠して出ている。発見を遅らせようという意図があったとみている」(前出の捜査関係者)

 コロナ禍で一生懸命、頑張っていた若い女性の命を奪った犯人が一刻も早く捕まることを祈るばかりだ。(AERAdot.編集部 今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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