悲鳴嶼行冥(画像はコミックス15巻のカバーより)
悲鳴嶼行冥(画像はコミックス15巻のカバーより)

鬼滅の刃』に登場する「鬼殺隊」の中でも、「最強の男」と称されるのが、岩柱・悲鳴嶼行冥だ。コミックス11巻の「唐突 ブッ込み 柱の皆さま腕相撲ランキング!」には、1位の悲鳴嶼が「ぶっちぎり」と記載されている。2位に音柱・宇髄天元、3位に炎柱・煉獄杏寿郎と続くが、彼らと比較しても圧倒的パワーであることがわかる。しかし、この悲鳴嶼は泣き顔で描かれることが多く、初登場シーンでは、主人公・炭治郎の処刑をほのめかすなど、そのキャラクターはわかりにくい。なぜ悲鳴嶼は強者ぞろいの「柱」の中でも「最強」と言われるのか。そこには、戦闘力だけではない「人を守る強さ」があった。【※ネタバレ注意】以下の内容には、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。

【写真】「上弦の鬼」のなかで最も悲しい過去を持つ鬼はこちら

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■鬼殺隊・最強の男

「鬼殺隊」の隊士たちは「呼吸」と呼ばれる方法を使い、通常の人間では考えられないレベルの体力、スピード、パワー、体技、剣技によって、「鬼」と互角に戦う。そんな鬼殺隊の中で実力が突出している者は「柱」と呼ばれるが、そのなかでも、最年長27歳の柱である、岩柱・悲鳴嶼行冥(ひめじま・ぎょうめい)は「最強」と称される。

 あれほど強く、個性的で、意志強固な「柱」が居並ぶ中で、悲鳴嶼はどの柱からも一目置かれる。220センチ、130キロと体格に恵まれただけでなく、鋭い感覚を持つため、盲目でも、その不便さを一切感じさせない。

■悲鳴嶼の突出した戦闘力

 悲鳴嶼が「上弦の壱」と呼ばれる鬼・黒死牟と対峙した時には、黒死牟に「極限まで練り上げられた肉体の完成形… これ程の剣士を拝むのは…それこそ三百年振りか…」とまで言わしめる。

 悲鳴嶼の使う日輪刀(※鬼狩りのために使用する武具)は、斧と鉄球を鎖でつないだ特殊な形状をしていて、非常に扱いづらい。しかし、材質の鉄・作刀技術ともに極めて素晴らしく、太陽光を含んだ刀は鬼の皮膚を焼き、重い鉄球が体を砕く。まさに最高品質の日輪刀を、悲鳴嶼は見事に使いこなしているのだ。

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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子どもたちは「自分を信頼してくれなかった」