※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 お医者さんの肩書の一つに「医学博士」があります。しかし、この医学博士を持っているからと言って、医師免許をもっているとは限りません。そもそも、この学位をもっていると何がすごいのでしょうか? 近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師が解説します。

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 医学博士という肩書があります。

 医学博士と聞くと少し高尚な印象を受けることもありますし、その分野の専門家であるように感じます。一方、医学博士であっても実力差はあり、この肩書そのものをうさん臭いと思う人もいます。

 研究職につく人間にとって医学博士とは「足の裏についた米粒」と言われています。

 これは「とっても食べられないが、とらないと気持ち悪い」という意味です。

 そうなると、医学博士にはどういう意味があるのでしょうか?

 まず、医学博士そのものは医師でなくても取得することができるのをご存じでしょうか。医師でない場合、大学院の修士課程(もしくは6年生の大学)を卒業し、医学分野の博士課程を卒業して論文を書けば医学博士が取得できます。

 このため、医師免許のある医学博士もいれば医師免許のない医学博士もいます。

 医師かつ医学博士の場合、名刺には「医師、医学博士(MD, PhD)」と記載されることが多いようです。

 医師が医学博士を取得する場合は、医学部を卒業後に大学院に入らないといけません。多くの場合、医師免許取得後、何年か医師として勤務し、その後に大学院生になります。入学試験を受け、授業料を支払い、医師としてバイトをしながら研究を進める。医師が入学する博士課程は4年間あるので、この間に研究論文を書いて学位(医学博士)の取得を目指します。

 大学院に入る医師は仕事に脂が乗っている時期と重なることが多く、患者さんをみながら研究をする人が多いようです。話は脱線しますが、大学の医局に所属している医師が、ただ働きで入院患者さんの治療にあたっていた、いわゆる無給医の問題がメディアで取り上げられました。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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