安易に購入しないようご注意を(写真/Getty Images)
安易に購入しないようご注意を(写真/Getty Images)

 10人に1人が難聴といわれる時代。耳の聞こえを補う手段の一つ・補聴器は、じつは高度な医療機器であることをご存じでしょうか。現在発売中の『「よく聞こえない」ときの耳の本 2021年版』(朝日新聞出版)では、耳に関するよくある疑問について、耳鼻咽喉科の専門家に聞きました。

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疑問1 難聴と診断される人は日本にどのぐらいいるの?

 現在、日本で難聴とされる人の割合は、統計的には人口の約1割強とされています。これは軽度難聴以上と診断された難聴者の割合であり、聞こえの悪さが気になっている人や聞こえで困っている人も含めると、さらに割合は増えると予想されます。今後のさらなる高齢化で、人口における高齢者の割合がさらに増加していくと、難聴者の割合も今よりも増えていくでしょう。

 近年は携帯音楽プレーヤーやスマートフォンで長時間、大音量で日常的に音楽聴取をする若者が増加しており、難聴のリスクとして世界的に問題になっています。今後は、騒音性難聴の増加も懸念されています。

疑問2 「めまい」と耳は何か関係がある?

 内耳には、蝸牛(かぎゅう)、半規管(はんきかん)、前庭(ぜんてい)という器官がありますが、聴覚に関係しているのが蝸牛で、半規管や前庭は平衡感覚に関係しています。よって、内耳に異常をきたすと難聴症状のほか、半規管や前庭の平衡感覚機能も損なわれて、めまいが生じることがあります。

 急な難聴を引き起こすメニエール病は内耳全体の病気です。そのため、蝸牛の機能が損なわれて難聴症状が引き起こされるほか、前庭や半規管の機能も損なわれて、めまいやふらつきが生じます。

 片耳の難聴の症状に加えてめまいの症状があるときには、メニエール病や突発性難聴である可能性があります。急な難聴やめまいの症状があるときには、できるだけ早急に耳鼻咽喉科を受診しましょう。

疑問3 加齢性難聴は治療することができない?

 老化を止めることができないように、加齢による難聴の場合は、悪化のスピードを緩めることはできても、一度悪くなった聴力をもとに戻すことはできません。将来、再生医療の分野で研究が進めば聴力を改善できる可能性もありますが、現在の医療では不可能です。

 ただし、ことばの聞き取りについては、補聴器による脳のトレーニングによって改善できる可能性はあります。ことばは脳が耳から入った音を処理して聞き取るため、補聴器を装用してリハビリを受けることでまた聞き取りのできる脳に変えていくことができます。

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