我妻善逸(右)(画像はコミックス3巻のカバーより)
我妻善逸(右)(画像はコミックス3巻のカバーより)

かつて、漫画『鬼滅の刃』が累計1億冊を突破したことを記念して、「新聞ジャック」と呼ばれるイベントが行われたことがあった。コミックス最終巻・23巻が2020年12月4日に発売されたのに合わせて、新聞全国紙5紙に、主要キャラクター15人のイラストとセリフが掲載されたのだ。鬼滅の名言はたくさんあるが、朝日新聞に掲載された我妻善逸の名セリフはファンから特に大きな反響を集めた。人気投票1位にも選ばれる善逸の魅力を、数々のセリフから考察した。【※ネタバレ注意※】以下の内容には、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。

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■我妻善逸の性格

『鬼滅の刃』に登場する、剣士・我妻善逸(あがつま・ぜんいつ)は、突出した剣技とスピードを持ちながら、使える技は「雷の呼吸 壱ノ型・霹靂一閃(へきれきいっせん)」だけ、という特殊なキャラクターだ。

 藤襲山で行われた鬼殺隊入隊試験「最終選別」では、善逸はこれから起きる試験内容に緊張してか、傷だらけの暗い顔で沈黙を守っていた。その後、たくさんの入隊希望者の命が失われる厳しい試験を突破した善逸は、試験終了直後に口をひらいたかと思えば、「死ぬわ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ ここで生き残っても 結局死ぬわ俺」とネガティブなひとりごとをつぶやいている。

 その一方で、善逸には「絶叫キャラクター」の一面がある。彼は、「女がらみ」でよく絶叫する。炭治郎の妹・禰豆子の愛らしさに興奮して、「ギャィィアアアアアアァ アアアアア 可愛すぎて死にそう」と叫ぶ。道端で出会った女の子に、「結婚してくれ」と叫ぶこともあった。

 さらに彼は、「女の子」以外のことでも絶叫することが多々ある。

<うわぁぁ 炭治郎聞いてくれよーーーっ くさい蜘蛛に刺されるし 毒ですごい痛かったんだよーーーっ>(6巻・第48話「蝶屋敷」)

 このセリフは、善逸が炭治郎に伝えた泣き言である。彼は「甘えられる相手」を見つけ、大声で叫びながら、とにかくわがままを言う。『鬼滅の刃』の中で、間違いなく、一番おしゃべりなキャラクターである。

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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善逸が信じるのは「人」そのもの