切除の方法を決めた上で、さらに腫瘍の大きさや位置などを考慮・検討し、手術方法を開腹と腹腔鏡の二つから選択する。

「このケースでは、ある程度大きく取る系統的切除が選択されると予想されます。その場合、腫瘍が重要な血管に接していないなど安全性が十分確保できれば、からだへの負担が少ない腹腔鏡手術の選択が可能です。ただし系統的切除の腹腔鏡手術は高度な技術と経験が必要なため、できる病院はある程度限られます」(酒井医師)

 腹腔鏡での系統的切除は、日本肝胆膵外科学会によって修練施設(高度な技術を持つ病院)に指定され、かつ日本内視鏡外科学会が認定する技術認定医(肝臓)がいる病院でおこなうのが望ましい。これらの病院や医師は各学会のホームページで地域別に検索することができる。

 一方、5センチ以上ある大きな腫瘍や、がんが主要な血管などに広がっている場合、また、以前何らかの病気で胃など上腹部の開腹手術をしたことがあり、臓器の癒着が予想される場合などでは、開腹手術が選択される。

 ランキングの一部は特設サイトで無料公開しているので参考にしてほしい。「手術数でわかるいい病院」https://dot.asahi.com/goodhospital/

【医師との会話に役立つキーワード】

《肝障害度》
肝臓の機能(予備能力)がどの程度維持されているかを表す分類の一つ。ほかにChild-Pugh(チャイルドピュー)分類もある。Aが最も良く、B、Cと進むにしたがって機能が悪くなる。手術による切除の適用になるのは、主としてAの場合。

《系統的肝切除と部分切除》
肝臓を門脈、胆管などの分岐にしたがって八つの区域に分け、がんがある区域ごと大きく切除することを、系統的肝切除という。部分切除は、比較的小さながんを小範囲に切除することをいう。

【取材した医師】
済生会新潟病院 消化器内科部長 石川 達医師
久留米大学病院 肝がんセンター 肝臓外科 酒井久宗医師

(文/梶葉子)

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より