原発性肝がんの場合、状況によって治療の選択肢が複数あるので、主治医とよく相談しながら治療に臨むことが大切だ。済生会新潟病院の石川達医師は次のように話す。

「肝がんの治療は、手術を担当する外科医と手術以外のラジオ波焼灼療法や塞栓(カテーテル)療法などを担う内科医が、肝機能や病態、患者の年齢や全身状態などさまざまな要素を考慮し、ディスカッションしながらおこないます。原発性肝がんは再発しやすいので、その時々で最善の治療を選択することが不可欠です」

■たとえ再発しても繰り返し治療が可能

 チャートのような、肝機能が良く初発(再発ではない)のがんの場合、手術での切除が選択される。久留米大学病院の酒井久宗医師は次のように言う。

「このケースは2・5センチの腫瘍が一つです。肝癌診療ガイドラインでは3センチ以内のがんの場合、ラジオ波やマイクロ波での治療も選択肢に入ります。ただ年齢が75歳で肝機能が良いこと、たとえ3センチ以内であっても、顕微鏡レベルでは周囲の重要な血管にがんが広がっている可能性もあることなどを考えると、切除をして根治をめざす選択が良いと思います」

 がんが1個で肝機能が良い場合には、大きさにかかわらず切除が推奨される。

 一方、肝硬変が進行して肝臓の機能が落ちている場合や、心肺機能や全身状態が悪く、手術による切除が難しい場合などには、ラジオ波焼灼療法やマイクロ波凝固療法、塞栓療法などが選択される。

「これらの治療は局所麻酔でおこないます。からだへの負担が少なく3~4日で退院できるので、90代後半の患者さんでも治 療をして元気に帰っていきます。原発性肝がんは、養生しながら現在の肝機能を維持し、たとえ再発してもラジオ波や塞栓療法をすることで、モグラたたきのように繰り返し治療をすることができるのです」(石川医師)

■腹腔鏡手術を受けるなら学会の認定医が望ましい

 原発性肝がんの手術でまず重要なのは、肝臓をどの程度切除するかを決めることだ(キーワード参照)。肝機能が良ければ、なるべく再発を防ぐ意味でも、ある程度大きく切除(系統的肝切除)することが望ましい。また肝機能が悪い場合には、大きく切除すると肝不全などを起こす恐れがあるため、がんを小範囲に切除する方法(部分切除)が採られる。

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