ただ、残念なのは、コロナ禍による撮影中断とスケジュールのズレにより、放送再開後の出番が減少してしまったことだ。人気の高い役だけに、ガッカリしたファンも多く、待望論も出た。結果として「勝ち逃げ」みたいな感じでもあるが、煕子のように亡くなったわけではない。最終回までに再登場となれば、盛り上がるだろう。

 そんな帰蝶(=川口)人気のかげで、わりを食ったのが門脇麦演じる駒だ。架空の人物ながら、この作品のヒロインとして位置づけられているのに、スタート当初は代役騒動の帰蝶ばかりが注目された。そのため「ヒロインは駒なのに」という同情の声も聞かれたものだ。

 それでも、中断前の評価はまずまずだったが、再開後にそのキャラクターが変化。信長の行動に影響を与えた帰蝶の役割を引き継ぐかのように、光秀や足利義昭など、歴史上の人物を動かし始めた。出番も増えて、ヒロインどころか「裏の主役」みたいになり、そこに違和感を覚える視聴者が続出したのだ。

 これが信長を夫に持つ帰蝶ならまだわかるが、駒は医師に仕える薬作りの町娘にすぎない。まして序盤では、門脇いわく「(光秀に)絶賛片思い中」という乙女だった。それが終盤では将軍の愛人のような立場になったりして、そのぶん、主人公との距離も遠ざかることに。おかげで、そのヒロイン性にブレが生じたのである。

 また、帰蝶は帰蝶で出番の減少により、幼なじみだった光秀との関係性がうやむやに。とはいえ、煕子を生かし続けるわけにもいかない。「麒麟がくる」は現在、ヒロインおよびヒロイン的存在の女性が不足した状態といえる。

 もっとも、歴史ドラマである大河において、女性の描き方はとかく難しい。男性たちの政治や戦争の駆け引きのなかで、翻弄される立場になりがちだからだ。活躍させすぎると説得力を失うため、尽くしたり、犠牲になったりするかたちにしたほうが据わりがよかったりもする。

 そんななか、近年の大河でうまくいったのが「西郷どん」(2018年)だ。ここでは主人公の西郷隆盛が3度結婚した史実を活用。3人の妻をそれぞれ、橋本愛、二階堂ふみ、黒木華が演じた。しかも、不器用キャラの秘めた優しさだったり、南の島での冒険譚的ロマンス、幼なじみとの長年の結びつきといったものを割り振り、少女マンガのような萌え要素にあふれたものにしたのである。

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芦田愛菜演じる「たま」の今後はどうなる?