「駒」を演じる門脇麦(C)朝日新聞社
「駒」を演じる門脇麦(C)朝日新聞社

 NHK大河ドラマ「麒麟がくる」が終盤を迎えている。主要人物の退場も相次ぎ、注目したいのは女性キャラクターのそれだ。

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 1月3日放送の第39回では、主人公の明智光秀の妻・煕子(木村文乃)が病死。翌週の第40回では、光秀の幼なじみで織田信長の妻となった帰蝶(川口春奈)が故郷への隠居を決めた。

 このうち、煕子の死については、夫に対する看病疲れで亡くなったという言い伝えを活用。光秀の数少ない女性絡みのエピソードをうまく取り込み、感動的な夫婦愛のフィナーレに仕立てた。演じた木村も、美しくはかない印象を残せて幸せだっただろう。

 彼女はこれまでもポジション取りに恵まれやすいというか、出世作「梅ちゃん先生」(2012年度前期NHK連続テレビ小説)では主人公の兄を支える妻を演じて好感度を得た。また、昨年の主演ドラマ「七人の秘書」(テレビ朝日系)でも、この手の作品の主役のわりには押しの強くないキャラをきっちりこなしてヒットに貢献。その堅実な持ち味は、大河でも生かされた。

 そして、彼女以上に株を上げたのが、帰蝶役の川口春奈だ。この帰蝶については、後世に創作された部分が大きいが、1973年の大河「国盗り物語」で松坂慶子が演じたあたりから、お市の方や北政所、千姫などと並ぶ戦国ヒロインのひとりとなった。周知の通り、本来は沢尻エリカが演じる予定だったものの、不祥事で降板。川口はその代役だ。

 しかも、本格的時代劇は初めてなうえ、過去には主演連続ドラマが途中で打ち切りになるなど「数字のとれない女優」というイメージすらあった。それゆえ、起用を危ぶむ声もあがったが、その芝居と存在感はおおむね好意的に受け入れられた。これは日常的リアリティーより、華や型で勝負するタイプの彼女と大河の世界観、帰蝶という役柄がハマったからだろう。

 去年の3月、

「間違いなく、自分を成長させてくれる役だと思うし、何もかもがチャレンジです。(略)終わったとき、結果的にスキルアップして、いろいろなものが吸収できていれば、すごく幸せなことだと思います」(クランクイン!)

 と語っていた彼女。その言葉通り、女優としての下克上に成功したといえる。

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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わりを食ったヒロインの「駒」