世界ボクシング協会(WBA)は6日(日本時間7日)、WBA世界ミドル級王者の村田諒太(34=帝拳)が、同級スーパー王者に昇格したと発表した。一見して村田が「格上げ」されたように映るが、そもそもスーパー王者とは何なのか。背景には「世界王座の乱立」「世界タイトルマッチの乱発」という、プロボクシング界が抱え続ける根深い問題がある。

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「『スーパー』などと仰々しいネーミングで、ボクシングに詳しくないと村田がすごい存在になったと思う方もいそうですが、素直に喜んでいいニュースではありません」

 ため息をつくのは都内のボクシングジムの関係者だ。

 そもそもプロボクシングには、最も軽量のミニマム級から最重量のヘビー級まで、17階級ある。単純に考えれば王者は各階級にひとり、計17人のはず。

 だが、ボクシング界は複雑で、「タイトル認定団体」という組織が世界に複数存在する。WBAもその一つ、最も歴史のある認定団体である。

 現在の潮流では日本を含むほとんどの国がWBAの他、世界ボクシング評議会(WBC)、国際ボクシング連盟(IBF)、世界ボクシング機構(WBO)の計4つのタイトル認定団体の王座についた選手を「世界王者」と認めている。つまり、一つの階級で4人もの世界王者がいることになる。

 日本人選手は、どの団体の王座を狙っても良い。別の団体の王者同士がそれぞれの王座をかけて戦うこともあり、勝てば「王座統一」となる。

 こうした背景があり「世界王者なのに一人じゃない」というややこしい話になっているのだ。だが、話はこれで終わらない。

 タイトル認定団体は世界タイトルマッチに出場した両選手の報酬から、「タイトル認定料」を徴収し、それが大きな収入源となっている。試合を組むプロモーター側も、冠がつくことで注目が高まりもうけやすくなる。先の関係者は解説する。

「認定料は選手のファイトマネーの数パーセントが相場です。つまり、世界タイトルマッチが多ければ多いほど認定団体は潤うことになります。資金に苦しい一部の認定団体が、あらゆる理由を付けて同じ階級の中で『世界王座』を乱立させ、タイトルマッチを増やしているのです。おかげで世界王者が増えすぎて価値が低くなってしまっている。村田がベルトを持つWBAがその諸悪の根源です」

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WBAには「休養王者」まで誕生