2018年に65歳以上の東京都世田谷区民676人を対象におこなわれた調査では、全体で約8割、75歳以上になると約9割が何らかの足のトラブルを抱えていた。乾燥、冷え、爪の変形、むくみ、しびれ。足の悩みは多くの人が持つものでありながら、歯科や眼科のようなわかりやすい窓口はまだ少ない。

「アメリカには歯医者と同じくらいの足医者がいます。歯科医院のように、足の病院が街にいくつもあるのです。しかし、日本には足専門の病院はほとんどありませんでした。だから、日本でも足の病気をしっかり診ていこうということで、2000年頃からフットケアや下肢救済という考え方が盛り上がり始めました。日本のフットケアはまだ過渡期なのです」

 下北沢病院は、こうした問題を解決するべく、足の総合病院として2016年にリニューアルオープンした。あらゆる足の病気に対応するため、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、栄養士など、さまざまな専門分野を持つスタッフが連携して治療にあたっている。

 また、下北沢病院のように一つの病院で完結できなくとも、地域の病院や施設同士で連携を取って対応している例も増えているという。例えば、自分で爪切りができない健康な人の爪を代わりに切るのは非医療行為として扱われるので、訪問介護のヘルパーや、フットセラピスト、ネイリストなどが担当する。

 ただ、同じ爪切りでも、糖尿病や動脈硬化症を抱えている患者のフットケアは医療行為とみなされるので、対応できる病院を紹介して行ってもらう、というように柔軟に対応している。

「まだ不完全な形であるとはいえ、フットケア外来が次々と立ちあがり始めて、患者さんも段々と受診しやすくなってきています。これからもさらに、フットケアの考え方は広がっていくと思います」

 AAA(Act Against Amputation)という足病を専門とする医師たちが集まって作った組織のホームページ(https://aaa-amputation.net)では、足病に関わる情報を集約し、どの病院を受診すればよいかなどを分かりやすくまとめようと動いている最中だという。

 一生自分の足で歩けるということは、QOL(生活の質)の観点からも非常に大きな要素と言える。「年を取れば足が痛いのは当たり前」と放置せず、まずはフットケア外来で相談してみると良いだろう。

(文・中川雄大)