近年、離婚をしたら父母のどちらかしか子の親権を持てない民法の単独親権制度の見直しを求める声が強まっている。離婚後の単独親権は親の子育ての権利を侵害しているとして、最近は違憲性を問う国家賠償訴訟が続いている。現在進行中の訴訟だけでも6件、今秋には、子どもが原告となって国を提訴したことも話題となった。
世界の先進国のなかで、離婚後の単独親権制度をとっているのは日本だけ。これに対して、最近は諸外国からも非難の声が上がっている。2月には、国連の「子どもの権利委員会」が日本政府に対し、外国籍の親も含め離婚後の共同養育を認める法改正や別居親との接触を続ける方策を実現するよう求めた。
こうした動きもあり、共同親権の法制度化の機運は高まりつつある。なかでも、離婚・別居後の面会交流が遂行されず、「子どもに会えない」と嘆く別居親たちの期待は大きい。
「共同親権制度にさえなれば、子どもに会えるようになる!」
との声はよく聞かれる。
しかし、家族間の紛争を多く手がける弁護士の土井浩之氏は、「共同親権制度に過度な期待は禁物だ」と警鐘を鳴らす。
「外圧をかわすためのトリックとして、たとえば“選択的”共同親権といった骨抜きの制度になってしまうのがいちばん心配です。これだと夫婦間の同意がなければ共同親権にならないわけなので、いまよりむしろ係争が増えてしまう可能性もある。離婚・別居後も両親が子育てに関わるためには、原則的共同親権でなければ意味がない。当事者は、子どもの健全な成長のために実効性のある法律ができるよう、しっかりと声をあげていくべきでしょう」
■共同親権=共同養育ではない
そもそも、共同親権制度が実現すれば、別居親が「子どもに会えない」状況がすぐに解消されるわけではない。なぜなら、まだ離婚していない、つまり子どもの親権をもっている別居親であっても、同居親によって子どもに会わせてもらえないケースは多いからだ。