――どんな人から相談を受けているのですか?

セックスレスにまつわる相談は、ほとんどが女性からです。男性からの相談はほとんどありません。実際、セックスレスによって不満を抱えている人のうち8割が女性と言われています。

――なぜ、男性は相談しないのでしょうか

できない理由を持ち出して、向き合うことをしない人が多いからだと思います。いろんな理由を付けて、「(性行為を)しない方向」へと理論づけようとするのはダメな男です。とくに、性行為をしない理由について、「性欲」という言葉を持ち出すのはずるいと思っています。そもそも性欲と性行為を、常にイコールにしてはいけません。私は30年以上AV男優としてやってきましたが、性欲なんて感じたことはほぼないです。

セックスは相手があってのこと。自分のことだけで物事を語ってはいけません。性欲だとか、気持ちいいか否かだけではない、いろんなものがそこにはあるのです。ちなみに欧米人からすれば、結婚のなかに「性行為をする」ことが当たり前に入っているそうです。セックスは人間の営みの一つなので、それがスタンダードじゃないことの方が問題です。日本人は、セックスをすることに対して、本当にハードルが高い国民だと思います。

――セックスレスに陥りがちな国民性だとすれば、日本人はどうすればいいのでしょうか?

朝起きたら、当たり前のように歯を磨きます。それと同じぐらいのレベルにしてしまえばいいのです。日本人は性行為に対して、「特別なことをします感」がありすぎる。なぜ歯を磨くのか? 理由の一つは、それがエチケットだからです。性行為も付き合っている者同士、結婚している者同士なら、するのがエチケットと考えればいい。私は61歳ですが、横にパートナーがいたら、毎日しようとする姿勢は持っています。横にいるパートナーがいるのに何もせずに寝るということは、歯磨きをしないで寝るのと同じくらい失礼なことだと思っています。

実は職業ストレスがない分、私は今のほうが現役時代よりも元気です。体力的な観点からみたら減退しているかもしれませんが、私はセックスについて、体力や若さがさほど重要だとは思っていません。若さや元気が一番大事なら、18歳ぐらいの時に一番いいセックスができるはずですが、そんなわけがありません。私の場合は、経験して、チャレンジして、学習していって、補うものを増やしていきました。夫婦でも、失敗を恐れて避けるより、場数を踏んでほしい。何歳で最高のセックスができるかは、その人の心がけ次第です。女性はそれぞれ、性行為に対する価値観が違います。いかに相手に対応できるかが、減退しないコツです。

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セックスレス手前の「黄色信号」とは