「大リーグの打者を抑えるには、フォークやスプリット、チェンジアップなどの落ちる球が有効です。沢村はまず直球という武器がある。150km台後半の直球の威力は向こうでも通用しますし、内角を突くコントロールもあります。さらにスプリットという武器があるので、大リーグに向く投手と言えます。チームの状況にもよりますが、佐々木主浩ほどの実績はないので、いきなりクローザー(抑え)ということは考えにくい。セットアッパー(中継ぎ)で短いイニングを任されるのではないでしょうか」

 野茂英雄氏、佐々木主浩氏のフォーク、上原浩治氏、現役では田中将大のスプリット。落ちるボールを駆使して成功した日本人投手は多い。先駆者と比べても、沢村の150kmの超高速スプリットは「規格外」と言えるかもしれない。

 ただ、村上氏は「勘違いしてはいけないところもある」と注文も付ける。

「メディアでは何キロ出たなどと、スプリットの球速ばかりに焦点が当てられていますが、落ちる球の球速が速ければ速いほど打てないという単純な話ではありません。大リーグには直球の球速に近い、高速の落ちる球を得意とする選手もいれば、苦手な選手もいます。逆に直球との球速差が大きい落ちる球についても、同じことが言えます。打者の得意な速度で落ちる球を投げてしまうと、少し制球が甘くなるだけで簡単に打たれてしまいます」

 では、どうしたらメジャーの強打者たちを抑えられるのか。

「沢村が成功するカギは、スプリットの『緩急』にあります。少し球速が落ちる142km前後のスプリットを習得し、打者によって高速スプリットと使い分けられるか。そこに気付かず、速さ一辺倒になったらやられるでしょう。そのうえで変化球をもう一つ、できればカーブ系のボールを使いこなすことができれば、投球の幅が広がりさらに抑えられる確率が高まります」

 過去には佐々木主浩氏が巨人戦のラジオ解説で沢村のスプリットについて、「(スピードが)速すぎると思う。緩急がついていない」と村上氏と同様の発言をしている。 

 沢村の選択肢は「大リーグ挑戦」「ロッテへの宣言残留」「国内他球団への移籍」の3つ。沢村はすでに代理人に、イチロー氏を担当したこともあり「すご腕」として知られるジョン・ボッグス氏を選定。米大リーグの情報サイトでは、複数球団が沢村に興味を示していると報じられている。

 果たして決断は――。(AERAdot.編集部)