BABYMETAL。現在はSU-METALとMOAMETALの2人編成となっている(写真/GettyImages)
BABYMETAL。現在はSU-METALとMOAMETALの2人編成となっている(写真/GettyImages)

 BABYMETALの『NHK紅白歌合戦』初出場が発表されて以来、一部ネット界隈がかしましい。はい、ベビメタの紅白出場に対する「いろんな危惧」論争です。

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 いわく、<アイドル枠としての出場ならば、演歌歌手のバックで踊らされるのではないか>。いわく、<NHK十八番の勘違い演出で、ベビメタならではの「あの」世界観が台無しにされるかも>。いわく、<短縮ヴァージョンとか紅白スペシャル・メドレーを歌わされた日には、せっかくのベビメタ楽曲の緻密な様式美と圧倒的なダイナミズムが台無しにされるぞこら>。とか。

 思い出せば4年前――海外メタル・シーンでの華々しい実績と共に「凱旋帰国」して、国内四大フェスと東京ドーム2daysを成功させたものの、紅白は落選した2016年は真逆の反応だったはずだ。いわく<アイドルに矮小化されるぐらいなら、選ばれなくて正解>だの、いわく<福山(雅治)にセカオワにPerfumeに星野源と、所属事務所枠オーバーの犠牲になった>だのと、屈折した憤りと負け惜しみ各種が懐かしい。

 出場しても落選しても、文句を言わずにいられない。そうなのだ。BABYMETALのファンはかなり複雑なのである。私も幾度となく炎上の憂き目を見てきた(←あからさまな、燃やされる気満々)。

 BABYMETALの公式ラベリングは《メタル・ダンス・ユニット》だが、そもそもは某多人数女子グループアイドルから「たまたま」派生した課外活動ユニット。「どヘヴィメタル・サウンドをバックに激しいダンスとかわいい歌詞を全力かつストイックに歌う、年端のいかぬ三人組女子アイドル」という、単純明快な<アイドルとメタルの融合>ギミックがお題目だけれど、要はおそろしくざっくりとした企画物の一つだったに違いない。

 ところが制作陣の、おそらく面白半分で発車したはずのメタル魂に歯止めがかからなくなり、楽曲も演出もとにかく凝りに凝りに凝りに凝り始める。結成3年目には超絶技巧派メタル職人バンドがライブで生演奏を担うに至り、本気で<ヘヴィメタル・アイドル道>を邁進する羽目になった。数奇な運命。しかし、“ギミチョコ!!”のMVがYouTubeで2000万回以上も再生――しかも内1500万回が海外ユーザーという、日本より海外の方が激しく反応したのだから、笑うしかない。結果、メタル・ゴッドたちのオープニング・アクトや有名メタル・フェスに引っ張りだこのみならず、全世界で数千人規模の会場をソールドアウトできる「本物」になってしまった。

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「本物」を追求してきた姿勢と実績