2013年夏の《キツネ祭り@目黒鹿鳴館》で初めて目撃して以来、ずっと定点観察してきて思うベビメタの成功要因は、いろんな意味で<本気のマニア仕様>だったことに尽きる。

 アイドル的には、いくらメロディーがポップでもあの速くて厚くて重くて複雑な<ヘヴィメタルの樹海>的楽曲を、全編キレっキレのフォーメーション・ダンスで完全支配する彼女たちの凛々しさは、感動的ですらある。しかもツインテール&ニーソックスが似合う童顔とくれば、ロリータに敏感な外国人はなおさらぐっときちゃっただろう。

 メタル的には、一切妥協することなく「本物」を追求してきた姿勢と実績が、メタル村の信頼を勝ち取った。本気の世界観を「これでもか」と構築して見せないと説得力に欠けるし、我々のような村外の者もこれだけ面白がることはできなかったはずだもの。

 そういう意味では、BABYMETALとは極めて<日本人ならでは>の作品である。

 たとえばK-POPなら、「ここをこうしたらもっと売れる」的な工夫の蓄積がBTSに世界規模の商業的成功をもたらした。しかしベビメタにおける「ここをこうしたらもっと面白い/笑える」的な追求の偏執さこそが、まさにJ-POPらしさを象徴している。売れることよりも機能性よりも、<マニアックであること>に至上の喜びと価値を見いだしてしまう我々日本人の、愛すべき本末転倒っぷりを自画自賛したい。積極的に。

 というわけでベビメタは素晴らしい。ついでに言えば、たぶん<アイドルに免疫のない元洋楽少年>である30代後半以上のメタルおじさんたちにとって、初めて遭遇したアイドルが自分が若かりし頃熱狂したヘヴィメタルをハイスパートに歌い踊る可憐なベビメタだったら、そりゃ心奪われて当然だろうし――。

 なんてBABYMETAL論を書く度に、<ファンをロリコン扱いするな!><ヘヴィメタルの復権という志を理解できないのか!!><メタルを演るアイドル、としか理解できないこの権威主義者!!!>といちいちディスられるから、面倒くさい。今回の紅白出場に対して懸念を抱きまくってるのもたぶん、メタル村の住民かと思われる。

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ちょっとしたことでは揺るがない世界観