鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑)
鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑)

写真は本文とは関係ありません(※イメージ写真/iStock)作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします
写真は本文とは関係ありません(※イメージ写真/iStock)
作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします

 怒るというより「虐める」に近いほど子供を叱りつけてしまうと落ち込む、3人の子育てに奮闘中の38歳母親。自分は性格破綻者なのかと自己嫌悪に陥る相談者に、鴻上尚史が「怒ることでは、子供は成長しない」と答えた意図は?

【相談82】子どもを叱り過ぎてしまい、怒るというか、むしろ「虐めている」に近い状況のときがあります(38歳 女性 ハルコ)

 鴻上さん、はじめまして。38歳専業主婦のハルコと言います。いつも楽しく記事を読ませてもらっています。

 私もどうしたらいいか分からなくて、相談させていただきました。

 私は専業主婦をしており、7歳、5歳、1歳の三人の可愛い息子たちにも恵まれて、毎日家事育児に奔走しております。私の悩みは、子どもを叱り過ぎてしまうことです。それはもはや叱るというか、怒るというか、むしろ「虐めている」に近い状況のときがあります。

 もちろん初めは子どもが悪くて、私が注意しても改善されず、というところから始まるのですが、私がなかなか気分が変えられないのか、いつまでもネチネチと嫌みを言い続けてしまいます。

 タチの悪いことに、長男を叱るときには、次男に「そうよなぁ?」と仲間にするように言葉をかけてしまいます。

次男を叱るときには、長男を仲間にするように。これでは暗にお友達の虐め方を教えているようなものです。

 叱ってもいいという免罪符を手に入れ、子どもが泣いてもわめいても、大声で罵倒したりグチグチと嫌みを言い続けたり、本当にロクでもない母親だと思いますが、そのときには自分が止められません。

 子どもたちは私が大好きで、私が怒り狂っているときには「おかあさん! だいすき!」と泣きながら言ってきます。私は、自分がどんなに罵倒しても、子どもたちからは嫌われないと思っているのか、「今は大好きとか、関係ない!!」などと、信じられないようなことを言ってしまいます。

 冷静になって、あとから深く反省して、「さっきはごめんね。お母さん、叱り過ぎたね」と言いながら抱きしめるのですが、その姿はまるで、DV夫のようだと落ち込みます。

 主人は仕事が忙しく、平日はほぼ私が家事育児を担っていますが、休日には協力してくれますし、私が頼れる実家・義実家も近くにあります。私も主人も温かい家庭で愛情いっぱいに育てられました。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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