「私が頼れる実家・義実家も近くにあります」と書かれていますが、ちゃんと頼っていますか? 怒鳴りそうになった時、キレそうになった時、「ごめん。キレそう。お願い」と自分の弱みをちゃんと見せて、丸ごと子供を預けていますか? 立派な母親にならないといけないと思っていませんか?

「私の我慢が足りないのでしょうか」とハルコさんは言いますが、「7歳と5歳と1歳の三人の息子さん」を育てるというのは、緊急事態宣言を出してもいいぐらいの状況です。キレたり、怒鳴ったりする方が自然です。

 7歳はいっちょまえの文句を言い、5歳は理屈にならない文句を言い、1歳はずっと目が離せないんじゃないですか? ストレスがマックスになり、緊張が続くのは当たり前です。

「子どもが泣いてもわめいても、大声で罵倒したりグチグチと嫌みを言い続けたり」というのは、ハルコさんの精神のSOSサインです。がんばろうと思っているけれど、もう限界だと、本当の気持ちが言っているのです。

 怒らないようにしようと思うのではなく、ハルコさん自身を楽にする方法を夫や実家と相談して下さい。義実家も、話せる義母・義父なら頼れるかもしれません。

 まずは、息子三人を思い切って実家か義実家に預けて、一日中ボーッとするとか、友達と温泉に一泊してくる、なんて緊急手術はどうでしょうか。

 夫が無理解のようなら、一度、子供達を怒鳴っている姿を録画して見せましょう。私は今、こういう状態になっているの、と。恥ずかしいとか母親失格とか言ってる場合ではありません。

 ハルコさんが精神的にも身体的にも楽になることが、子供達の幸せであり、家族全員の幸せなのです。

 とにかく、寝て、休んで、グチって、相談して、ホッとする必要があります。

 ここが踏ん張りどころです。あと数年で、子供達は理屈が通じて、ハルコさんの負担が減る時が来ると思います。

 今はとにかく、周りに頼って、ワガママを言って、休んで下さい。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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