進藤医師はこう話す。

「頸椎症に関しては、神経の入れ物である脊柱管の狭窄をともなっている場合が多いので、当院でも椎弓形成術で除圧する場合が多いです。しかし、前方からの脊髄圧迫が強い場合や、通常は前に弯曲している頸椎が、変形して反対に後弯している患者では再び神経が圧迫されやすく、治療成績が悪くなる可能性があるため、病状に応じて前方除圧固定術を選択します。この手術は難しいため、十分な技術と経験が必要です」

 椎弓形成術には、片開き法、棘突起縦割法など、いくつかの種類があるので説明をよく聞こう。椎弓形成術の合併症としては、感染や血腫による神経圧迫のほか、術後に頸部や肩周辺に強い痛みが出ることがある。青山医師は、痛みを軽減するために侵襲の少ない手術法を採用している。

「当院では、項部の筋肉をなるべく切らない選択的椎弓切除術をおこない、痛みや筋肉の萎縮を防いでいます。また、すべり症があって椎体が不安定な場合にも、ずれて痛みや神経障害が起こりやすくなります。その場合、手術で椎体を固定することが必要となります」(青山医師)

 手術による症状改善は、神経の回復力が残る早期のうちほど期待できる。

「悪くなる前に、脊椎・脊髄の専門医に相談してください」(進藤医師)

 頚椎症をはじめとする首や腰の手術などについて、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。ランキングの一部は特設サイトで無料公開。「手術数でわかるいい病院」https://dot.asahi.com/goodhospital/

(ライター・坂井由美)

<取材した医師>
東京歯科大学市川総合病院脊椎・脊髄病センター長 青山龍馬医師
九段坂病院整形外科診療部長 進藤重雄医師

週刊朝日  2020年8月14-21日号