日本人は欧米人に比べ、神経の通り道である脊柱管が細い人が多い。脊柱管が13ミリ以下になると脊髄症状を発症するリスクが高いといわれ、生まれつき脊柱管が狭い「発育性脊柱管狭窄」の人は注意が必要だという。

 頸椎症の診断は、X線やMRI、CT検査により骨や神経の状態を調べる。加齢による変化は中年以降のほとんどの人に見られ、MRIによる脊髄圧迫所見は症状がなくても認めることがあるため、検査所見だけでは診断はできない。正確に診断するには、患者の症状と経過をくわしく問診し、身体診察をして障害部位を特定することになる。

 九段坂病院整形外科診療部長の進藤重雄医師は、治療法についてこう話す。

「頸椎症は人によって、悪化するスピードがかなり違います。症状がしびれだけの場合、進行しない人もおり、軽度の神経症状であれば薬物療法や理学療法などの保存療法をおこないながら経過観察をします。もし運動麻痺があれば、それは重症化のサイン。歩けなくなる場合もあるので、早い段階で手術をおこなうことを考慮します」

■    手遅れになる前に手術で回復をめざす

 薬物療法では、消炎鎮痛薬や筋弛緩薬、保険適用外だが神経障害性疼痛緩和薬のプレガバリン、抗うつ薬のデュロキセチンなどが使われている。

「神経根症では、手術の適応となる人は少数です。3~4カ月保存療法をしても改善しない人、最初から腕が上がらない、手が動かないなどの運動障害がある重度の人が対象です。脊髄症では脊髄の圧迫の程度と症状の重症度によりますが、とくに歩行障害があると転倒による悪化リスクが高いため、早めに手術する必要があります」(青山医師)

 手術法はおもに二つある。背中側から椎弓という骨の一部を切除して脊柱管を広げて間接的に神経の圧迫を除く「椎弓形成術」。必要に応じて、スクリューなどの器具で骨を固定する。

 もう一つは、首の前側から椎骨を削って病変部に到達して切除し、圧迫を除いてから自家骨や人工のケージなどを用いて椎体を再建する「前方除圧固定術」だ。

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難しい手術、早期の方が症状改善が期待できる